会長よりご挨拶

幸せとは
心と身体とが
健康であることです。
会 長
種村 一磨
当院は約70年の長きに亘たり、地域の皆様のご支援、職員の皆さんの奮闘によって発展を続けてきました。現在の形になるまで、都合8回の増改築を繰り返したのですが、本当に振り返ってみても奇跡的なことと感慨深いものがあります。
この発展は、地域の皆様の御支持、職員の努力の賜であり、深い感謝を奉げます。本当にありがとうございます。
私は医師、院長、理事長として、患者さんおよび職員の幸せが何処にあるのか、何を価値あるものと考えておられるのかを常に念頭に置いて、理念の具現化に努めてまいりました。
沿革や、各部門のご紹介を夫々にゆずり、私の役割として、大きな変革の真只中にある激動の社会で医療の未来について、私見の一部を述べて、御挨拶といたします。
大変革の主因は、情報技術の発展普及が大きいと思います。なかでも大規模言語モデルから飛び出してきた人工知能(AI)の出現は最大のエポックメイキングであります。
グーグルによる検索機能により、知識は簡単に得られるようになりました。知識の値段はタダとも云われます。さらに生成AIの出現により、単なる知識の提供にとどまらず、分析・推論・具体的な解決策の提示まで、飛躍的な機能の進化が進みつつあるのです。最早これにより社会の変化が急速に進む事は間違いのないことと思います。
医療の分野も例外なく大きく変化してゆきます。生命科学、医療技術、創薬その他あらゆるステージで、人工知能をツールとして使わない選択肢は最早なく、大きな知見の向上と質の向上、さらには業務の効率化なども、なされてくるでしょう。
我が国は、世界的に類を見ない程の、平等な、恵まれた裕福な国であり、世界に冠たる国民皆保険制度を堅持しています。
医療の高度化、進歩が進むことは社会の要請として必然ですが、一方ではそれが故の高コスト化を避けて通れない事も無視できません。医療に限らず、原資は有限で、大切に使わなければなりません。
ヒトの欲求の最たるものは不老不死であると思いますが、それぞれのシーンで健康的な幸せの追求の解を得ることは、それぞれで深く限りがないのです。幸せとは、心と身体とが健康であることです。
制度的にはベンサムのいう最大多数の最大幸福を目指すことになりますが、同時にまた個別性の追求もまた併行してなされなくてはなりません。
経路依存性という言葉がありますが、現在の医療の成り立ちに対してこれからの変革には、複雑系としての問題解決の困難さが容易に想像されるのです。
これらの改善・解決には、ツールとしての人工知能の使いこなしが、大きな鍵であり、その成果に大いに期待してよいのではないでしょうか。
そんな中で忘れてはならないことは、医療が患者さん(および家族)と、しっかりとしたパートナーシップを築いた医療者との共働作業であることの認識です。特に医療者は、専門職であるが故の独善に陥り易く、「病気をみて、ヒトを見ない」とのそしりを受ける危険性を孕んでいます。そのような共働作業でお互いの情報の共有にもチャットAIが大いに役に立つかもしれません。
最後になりますが、シムラ病院が地域で社会的役割を果たしていく為には、患者さん(および家族)の支持と職員諸君のたゆまぬ研鑽と努力が不可欠となります。幸せのために、皆さんで前に進みましょう。
これまでの御愛顧と御支援に感謝申し上げ、これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。